元旦

朝、八時頃起床する。

神棚にあがっていた、おせち料理をさげて頂く。近くの大手ショッピングモールチェーンにて予約販売していたものを買い、大晦日宅配してもらったのである。

一つの箱の中によこ五列、たて四列ぐらいの仕切りがしてあって、祝い肴に、黒豆、数の子、酢ごぼう、田作り、伊達巻、栗きんとん、ゆで卵をおそらく布で濾した後かためたような黄色と白のカステラ風のもの、くるみ、紅白の飾り寒天がある。
焼き肴は、一般的に鰤、鯛、海老、鰻の焼き物らしいが、なぜかコンビニ弁当に入っているような薄い焼鮭の小さい切り身が入っているのがケチくさい。
酢の物には、いくらが乗っかった紅白なます、ちょろぎ、あわびなのか貝の食感がする丸いものが入っている。
そして煮物には昆布巻、鶏のつくねと二口大ほどの鶏肉…。

どれも奥行きのない平面的な同じ味で、ただ、甘ったるいものと甘じょっぱいの二系統が、詰め込まれている。
元旦とはいえ酒を飲む気はしなかった。正直あまり美味しくない、いかにも大量生産の工場おせちを淡々と口に運び、胃に流し込み、母の作った鶏のもも肉、人参、大根が浮かんだ雑煮汁で口直ししながら黙々とたいらげる。

昼飯は食べなかったので、夕飯まで映画のダビング作業をやったり、図書館のリサイクルコーナーでもらってきた新井素子の『グリーンレクイエム』を読んだりして過ごす。
腹ごなしに外を歩きに行こうかとも思うが、意外に人が出ているのと行くところもないのとで億劫になり、結局在宅する。

近くのS寺で鐘の音がする。

ボーン、と長い余韻を響かせて。

その音について他人は何を考えるだろう。年明けにふさわしい、風流を感じるだろうか?私にはそうはまったく思えない。
ほぼ一年中大した活動も示さない寺が正月に限って鐘をボンボン鳴らすのは、日頃無宗教で神社仏閣に滅多に寄り付かないのに正月だけ参拝を活発化させる庶民に向かって、商売の宣伝をしているのである。

ここに寺がありますよ?たくさん初詣にお出でなさい。お賽銭をたんまり投げて、多くのご祈祷依頼、お待ち申しておりますよ、と…。

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