映画「縁の下のイミグレ」(2023)

貧しい家族を支えるため、ベトナムの田舎から【技能実習生】として日本にやってきたハイン(ナターシャ)。
ジャパニーズドリームを夢見て工場で働くも、職場での不遇(賃金未払い)が続いた(ベトナム技能実習生のジャパニーズドリームとは、日本で数年間働いて貯めたお金で、母国に家を建てたり、新しく商売を始める際の資金にすること)。

ハインの様子を不憫に思った日本人の知り合い・土井(堀家一希)は、ネット検索で無料相談できる行政書士事務所を見つけ、相談の予約をする。
訪れた先の行政書士事務所で、曲者の行政書士・近藤(マギー)と、新垣(中村優一)に対応を受けるが、彼らとの対話の中で、ハインが多額の借金をして日本に来ている事情も知り、「技能実習生」の制度の闇が徐々にわかっていく土井。
曲者の近藤は、行政書士の仕事の範囲を超え、ハインをサポートする(はずの)監理団体という団体と直接やりとりをし、それを受けて慌てて監理団体の西村(ラサール石井)も事務所に駆けつけるが、その行政書士事務所に相談したのがハインだとわかると逆にクレームを言い、我々を責めるならハインも一緒に責められるべきだと騒ぎだす。

話が二転三転する中、この国の深刻な労働者不足を外国人で補おうという政策を推進しているおバカ二世議員(猪俣三四郎)も話に加わり、話は思わぬ方向へ・・・。

多くの矛盾を抱えた技能実習制度。果たして、この国に夢を描いてやってきた外国人労働者に未来はあるのか!?外国人労働者を受け入れるこの制度で、労働力不足は補えるのか!?
「安い国ニッポン」の底を支えてる陽の目を見ない外国人労働者にスポットが当てた異色の社会派ブラックコメディ。

(おおまかに、あらすじを紹介)

技能実習制度についてなにも知らない素人にも、制度の仕組みをわかりやすく笑いをとりまぜながら解説する密室劇の構成はこの映画の魅力だが、逆境にくじけそうになりながらも大きな壁に立ちむかっていく主人公・ハインのキャラクター設定は、戦後の美空ひばり映画や往年のスポ根漫画を彷彿とさせ予定調和感がいなめない。お涙頂戴、かわいそうな外国人、技能実習制度を悪用して搾取するばかりの日本・日本企業。物語の構成はあまりにステレオタイプだ。情に流されやすい日本人好みのストーリーである。

そもそも技能実習生はかわいそうなのか?

本作に加えて、技能実習制度をより深く知りたい方には―『ルポ 技能実習生』澤田晃宏/ちくま新書―をぜひ読んでいただきたいものだが、

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確かに日本企業に対しての当たり外れはあり、過酷な労働環境といった問題も存在するらしいものの、三年や五年といった年季を勤めあげることさえできれば、日本に来るまでの借金を払い終えてなお、大金を稼ぐことができ、彼らの母国に錦を飾ることができる現実がある。作中のハインのように、縫製工場が稼げないのなら、と殺場で働くまでで、技能実習制度の期限内までに金を稼げればいいのである。人生のうちの三年や五年などあっという間なのだ。出稼ぎに来る外国人はぬるま湯に浸かりきっている日本人と違ってタフでドライである。

こういった外国人労働者、はたまた移民政策に関する映画や書籍、ネット記事を観たり読んだりしていていつも思いをはせるのは、目を向けなくてはならない本当の問題は、外国人に対する待遇の改善なんかではなくて、そもそも日本人の労働環境が劣悪であり、技能実習生など単純労働に従事する外国人に依存して、少子高齢化・出生数の減少という問題の根源を放置していることだ。上流の水が濁りきっていては、下流の水が澄んでいるはずがない。

日本にやってくる外国人の母国も将来的には経済成長していく中で、どんどんと賃金格差は狭まっていき、もはや四十年近く景気が低迷している日本に出稼ぎに来る意味はなくなっていく。応急処置的につぎはぎだらけの移民政策をしていても、傷は拡がっていくばかりである。

日本人労働者にとって、技能実習生のような年季はない。賃金は上昇し続けてはいるものの、物価高や増税によって、末端労働者に生活のゆとりができたという実感はなく、ただただ時間を浪費して死ぬまで働き続けるだけだ。

この国において技能実習制度や移民政策に関する情報は、日本人労働者・労働環境に対しての写し鏡のようだと言えよう。一部の外国人排斥運動や、外国人かわいそうバイアスをかけたニュースに踊らされることなく、彼らとの対話や共生にも重点を置きながら、日本人や日本という国にとっての国益・メリットを国民ひとりひとりが考えながら、政治を監視しなければいけない時期に来ているのかもしれない。

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