受け入れ先の企業でこれから働くことになっていたネパール人技能実習生が、ある日突然、失踪した。通っていた日本語学校にも、住んでいる寮にも言伝はなく、どこに行ったのかわからない。
監理団体職員の根古﨑と日本語学校教師のアリスが彼の行方を捜すことになった。
技能実習生寮の冷蔵庫に貼ってある「にほんでのお困りごと 即解決」と書いてあるマグネットシートの連絡先を頼りにその事務所へ向かうと、サングラスをかけた怪しげな外国人が現れる。
怪しげな外国人はコンピューターを駆使し、いとも簡単に失踪した技能実習生の居場所を突き止める。根古﨑とアリスが失踪した技能実習生・ラビを見つけたあと、彼から失踪した理由を聞き出すと、彼より先に日本に働きに来た恋人を探していたのだという。
三人が川原で話をしていると、噂のラビの恋人が小さな子供を抱いて目の前を歩いていく。ラビが彼女を追いかけると、彼に気付いた彼女は逃げるように走っていく。
実はラビが日本に来る前に彼女は日本人と結婚していて子供を授かり、日本で家庭を築いていたのだ。
ラビは彼女との失恋に気を病み、日本で働くことなく、母国へ帰ってしまうのだった…。
(大まかなあらすじ)
本作を一言で表現するならば、『不可解』である。テーマ、ストーリー、編集…作品を構成するすべての部品がバラバラでうまくつながっていない。この映画の概要をAIが説明するところによると、「技能実習生が失踪する問題を扱い、社会のあり方に疑問を投げかける社会派ドラマ」らしい、が、社会を斬るには底抜けに牧歌的である。
本作の内容を考えるためには、まず技能実習生に関する知識を得なければならないが、以下の書籍をおススメする。
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外国人がたくさん登場するただのコメディなのか、技能実習制度に焦点を当てた社会派作品なのか立ち位置がはっきりしない。冒頭とラストで電子部品を組み立てる工場の俯瞰映像が差し込まれ、技能実習制度についての説明をする社会派映画のそぶりを見せるのだが、結局、技能実習制度に斬り込むことはなく、ふたを開けて見てみれば、恋人を追いかけて来日した失踪ネパール人を日本人が追いかけるだけの物語になっている。脚本・編集を兼任した監督のコンセプトが定まっていなかったのではないか。
もしくは、製作段階で事情が二転三転して当初の目的が遂行できなかったのかもしれない。コンセプトやテーマのはっきりしない駄作の裏事情を聞くと、多くの関係者の口が挟まれたことによって、つぎはぎだらけの出来上がりになることがままあるからだ。
ツッコミどころが満載ではある。そのツッコミどころをギャグだと主張するならば、やはり技能実習制度というワードを盛り込むべきではなかった。技能実習制度というヘビーな話題と、あまりに軽すぎるギャグのオンパレードとが、どう考えてもマッチングしない。
そもそも、失踪外国人というには、職場でハラスメントを受けたとか、説明されていた給料より実際の給料が安くて借金が返せそうになかったとか、就労目的の留学生が日本語学校に通う時間ももったいなくてとか、彼らなりの深刻な事情があるものだが、本作のネパール人の失踪理由はというと、まだ日本で働いてもいない上に恋人探しのため、とは!
「失踪外国人問題から社会を斬り込むフリをして、実はただ恋人を探しに行ってただけでした~」というギャグなのだとしたら笑えないし、くだらなすぎる。
全編、吹き替えというのもどういうことか。筆者は最初、口の動きと音声が編集ミスでずれてしまっているのだと思っていた。しかしそれはミスではなく、意図的な吹き替えであった。日本映画なのに、テレビで韓国ドラマを鑑賞している気分になる。その意図はなんなのか。日本語が喋れない外国人の場面だけを字幕にするのが手間だった。音声スタッフが雇えなくて、役者の声がうまく拾えていないので吹き替えにしてしまった。この吹き替えさえも、ギャグなのだろうか?
とにかく整合性を考えていては、この作品を鑑賞することはできない。説明することが難しく、まさに百聞は一見に如かず、である。監督は自主製作映画を撮り始めて、四十年ほどのキャリアを持つという。そんなに長いことやっているのなら、少しは上達せんものかねぇ、などと思うが…。